世の中には、悪質なマルチビジネスやネズミ講の手口でお金を稼いでいる人がいます。現在は様々なマルチビジネスの形態があり、エステサロン業界にもマルチビジネスの手口が存在しているのです。

エステサロンを開業する方を狙ったマルチビジネスがある一方で、エステサロンのオーナー自身がお客様に対してマルチビジネスの手法を取ってしまうこともあります。

この記事では、エステサロンを開業する際に注意するべきマルチビジネスの手口や、自身がマルチビジネスをしてしまわないようにするための注意点などを徹底解説します。

  1. そもそもマルチビジネスってどんなもの?
  2. なぜマルチビジネスに騙される人がいる?
  3. 悪質なマルチビジネスによって失う大切なもの
  4. エステサロン開業者を狙った悪質なマルチビジネス
  5. マルチビジネス勧誘の流れ
  6. マルチビジネスに騙されないための注意点
  7. 悪質なマルチビジネスの勧誘を断り大切なものを守ろう

そもそもマルチビジネスってどんなもの?

マルチビジネスとは、商品やサービスの販売員になって販売利益を得ると共に、新たな販売員となる新規会員を勧誘して、紹介料として報酬が得られるビジネスモデルになります。
ネットワークビジネスとも呼ばれ、日本における法律上の扱いは「連鎖販売取引」にあたります。

マルチビジネス自体は、法律上合法となっているため、マルチビジネスの全てが悪質というわけではありません。しかし、多くのマルチビジネスでは、売れない商品を「絶対に売れる」と言って勧誘したり、商品価格が高すぎる商品を買わせたりするため、トラブルに発展しやすいです。

連鎖販売取引は、法律により要件が厳しく規制されています。商品価格が不当に高かったり、誇大広告だと認められた場合、違法として取り締まりの対象になります。しかし、世の中には次々と新たな手口で悪質なマルチビジネスを始める業者がいるため、撲滅することが難しいのもまた事実。

マルチビジネスとよく似た、ネズミ講というものを聞いたことはあるでしょうか。マルチビジネスとネズミ講の大きな違いは、合法か否かという点です。マルチビジネスは「連鎖販売取引」に当たり、規定を満たしていれば違法性はありません。一方で、ネズミ講は「無限連鎖防止法」という法律で禁止されており、犯罪行為とみなされます。

ビジネスモデルとしては両者とも似ている点はありますが、マルチビジネスには商品やサービスの販売が伴うことに対し、ネズミ講は商品やサービスの販売はありません。新規会員の紹介料でしか報酬を受け取ることができないのです。入会してしまった人は新たな会員を勧誘するしか稼ぐ方法がありません。この連鎖が無限に続き、被害が拡大します。

勧誘されて入会した若者が、多額の借金を抱えて誰にも打ち明けることができず、命を絶ってしまうような痛ましい事件が起きていることをご存知の方もいるのではないでしょうか。このような悲しい事件を発生させないためにも、マルチビジネスには充分注意しましょう。

なぜマルチビジネスに騙される人がいる?

規制をして取り締まっていたとしても、悪質なマルチビジネスに騙される人は後を絶ちません。なぜ、悪質なマルチビジネスに騙されてしまうのでしょうか。次の3つの要因が考えられます。

  • 洗脳されたような感覚になる
  • 大金を稼げるという誘惑に負ける
  • 悪質さに気付かない

洗脳されたような感覚になる

マルチビジネスの勧誘をしてくる人は、言葉巧みに購入や入会を勧めてきます。世の中に普及しているものを例に出し、「~と同じようにこれが売れるようになる」など、まだ世の中に普及していない商品が絶対売れるようになると説明してくるのです。

他にも、「広告費をかけていないから原価率が高く、高価だが品質はいい」など、最もらしい言葉を並べて納得させようとしてきます。勧誘する側はメリットばかりを並べ、勧誘を受けている側に隙を見せないように畳みかけてきます。

勧誘を受けている側は、巧みな手口で心理誘導され、商品や勧誘者に対して疑いを持たず、洗脳されたように夢中になっていきます。

大金を稼げるという誘惑に負ける

マルチビジネスの話に興味を持つ人の多くは、何かしらの悩みを抱えていることが多いです。そして、その多くがお金の悩みであり、マルチビジネスを通してお金を稼ぎたいと思っています。

誰でも簡単にできて、時間も労力もかけず大金を稼ぐことができると誘われ、最初は疑いを持ちつつも現状からの脱却を志し、話を聞きに行ってしまいます。そして、マルチビジネスの業者はそのような心理状態に目をつけ、望むような生活が手に入るということを様々な形でアピールしてくるでしょう。

勧誘者が高価な衣服やバッグを身につけたり、「組織のトップの人はこんなにいい生活をしている」とSNSで写真を見せてきたり。それが当たり前のように見せることで、お金が稼げることを信じ込ませてきます。

マルチビジネスの業者は、お金を稼ぎたいと思っている一般消費者の足元を見て、悪質な営業をかけてくるのです。

悪質さに気付かない

マルチビジネスでは、一般的に世の中に普及していない商品を取り扱っていることが多いです。勧誘されたタイミングで試供品をもらえることもあり、実際に試してみると効果を実感でき、本当にいい商品だと実感するものもあるでしょう。

多くの業者は、勧誘の際になぜ世の中に普及していないかを説明してきます。「最新の技術・研究で開発された」「日本では規制されている成分だけど、海外では認可されていて、これから日本でも規制が無くなる」というようなことを伝えてきます。

これらのことを鵜呑みにしてしまうと、高額な商品であっても納得してしまい、お得だとさえ感じてしまうのです。そして、本当に売れる商品だから入会しようと決め、自身もマルチビジネスを始めてしまうようになります。

悪質なマルチビジネスによって失う大切なもの

悪質なマルチビジネスを始めることで、多くの大切なものを失くしてしまう可能性があります。悪質なマルチビジネスで失うものには、次のようなものがあります。

  • お金
  • 時間
  • 信頼

お金

マルチビジネスを始める際、高額な商品を買わなければならなかったり、入会金として多額のお金を請求されます。金額は様々ですが、20万円〜50万円程が最初にかかってくるでしょう。

さらに、会員にはランクがある場合が多く、課金した金額に応じて会員ランクが高くなって、紹介料のマージンが増えたり、商品の割引率が変わるという仕組みもあります。会員ランクが高ければ高いほどお得だと思い、初期投資に多額の金額をつぎ込んでしまったという被害者も。

実際には投資金額を回収できるほど会員数を集めることはとても困難ですが、早く稼ぎたいなら、多くの金額を投資するように勧めてきます。クレジットカードのキャッシング枠の利用や、消費者金融の利用を強引に勧めてくることもあり、お金が無いと言っても簡単に断ることはできません。

時間

マルチビジネスを始めると自分で商品を売ったり、新しい入会者を勧誘しなければならないため、多くの時間が必要になります。営業手法を学ぶ時間や、勧誘するためのSNSアカウントを作って運用する時間、入会希望者へ勧誘の話をする時間など、かなりの時間を費やさなければなりません。

営業が上手くできなかったとしても、時間をかければかけるほどその価値に見合うものを取り返そうという人間心理が働き、どんどんのめり込んでいってしまいます。もし始めるとしても、引き際を決めておかないと、いたずらに時間を消費してしまうでしょう。

信頼

マルチビジネスを始めると、新規会員を募る活動をしなければなりません。そうなった場合、多くの人は友人や家族など、自身の知り合いに声をかけ、マルチビジネスの勧誘をします。

しかし、マルチビジネスは世間的なイメージも悪く、マルチビジネスをやっているというだけで周囲の人間から距離を置かれることも。そして、マルチビジネスの勧誘をされた人は、「この人は私を騙そうとしているんだ」と思い、仲の良い友人だったとしても関係に亀裂が入ってしまうこともあります。

手当たり次第に色々な人に声をかけていると、いつしかコミュニティ内でも距離を置かれるようになり、今まで築いてきた信頼や友情を失ってしまうでしょう。

エステサロン開業者を狙った悪質なマルチビジネス

それでは、エステサロンの開業者を狙った悪質なマルチビジネスにはどのようなものがあるでしょうか。エステサロンの開業者が狙われてしまうマルチビジネスは、ズバリ化粧品販売のマルチビジネスです。

エステサロンを開業する際、エステサロンで取り扱ったり販売する化粧品を探すと思います。その過程で、インターネットで調べたり、化粧品について詳しい人に話を聞く機会があります。その中に化粧品を取り扱っているマルチビジネス業者がいて、マルチビジネスであることを隠して商品を勧めてきます。

実際に会って話を聞いていると、化粧品の説明から始まり、だんだんとビジネスモデルの話にシフトチェンジしていき、最終的には入会を勧めてくるでしょう。はじめに化粧品の良さを聞いており、入会することで安く仕入れられると聞くと入会した方がお得だと思ってきます。

そして、「エステサロンをやるなら、お客様を勧誘して会員を増やせばさらに収入が上がりますよ」と誘導してきます。そうすると、何だか意外と簡単にできてしまうかもと思い、入会を決めてしまうのです。

しかし、エステサロンのお客様は化粧品自体に満足していても、多額な入会金や大量の化粧品を必要としないことから、なかなか入会はしてくれません。冷静に話を聞いたらマルチビジネスだったと気付き、通っていたお客様が離れてしまうことも。

お客様をマルチビジネスへ勧誘していると、エステの評判が悪くなって客足が遠のき、経営を続けることが難しくなってしまう可能性もあります。気付かぬうちに、お客様へマルチビジネスの勧誘をしてしまわないように注意が必要です。

マルチビジネス勧誘の流れ

マルチビジネス業者はどのような流れで勧誘してくるのでしょうか。事前に知っておくことでリスクを回避できる可能性があるので、知っておくと良いでしょう。

  1. SNSやマッチングアプリでコンタクト
  2. カフェやセミナーで勧誘
  3. 高額な取引をその場で契約
  4. 自分も勧誘する側に

SNSやマッチングアプリでコンタクト

最近は、SNSやマッチングアプリを使用してマルチビジネスの勧誘を行っている業者が多いです。彼らは、SNSやマッチングアプリを通して、自身がいかに自由で裕福な暮らしをしているかをアピールしています。

SNSでは、不特定多数のアカウントをフォローし、投稿にリアクションをしてくることもあるでしょう。マッチングアプリでは他愛のない会話をしている流れで、お互いの仕事の話をするようになったときに勧誘をしてくることがあります。

エステサロン業界でいえばSNSによる勧誘が主流です。自身が取り扱っている商品がいかに優れているかを宣伝し、その化粧品に興味を持ってコンタクトをとってきた人に対して勧誘をしてきます。

カフェやセミナーで勧誘

インターネットを通して、何らかの形で会う約束をしたら本格的な勧誘をしてきます。カフェや飲食店で直接、あるいはセミナーへ参加させてそこで勧誘をしてくるパターンが多いです。

直接コンタクトをとっていた人物がマルチビジネス初心者の場合、経験値の高い人を呼んで代わりに説明してくることもあるでしょう。経験値の高い人は営業のスキルも高く、これまで何人も入会させてきた実績を持つような人もいます。

疑いの目を持って話を聞いていたとしても、徐々に魅力的に聞こえてくるようになり、「このビジネスなら絶対にうまくできるかもしれない」と感じるかもしれません。それほどまでに、彼らのトークスキルは高いのです。

高額な取引をその場で契約

商品やビジネスモデルの説明を終えると、いよいよ正式に契約する段階に入ってきます。もしまだ迷っていて、一旦話を持ち帰ってゆっくり考えたいと思っても、その場で契約するように強引に勧めてくるケースが多いです。

悪質な業者であれば、インターネットで調べれば怪しい情報が出てくるため、何としてもその場で契約してもらおうと、あの手この手で断る理由を潰してくるでしょう。特にお金を理由に断っても、借金をさせてまで契約させようとしてきます。

自分も勧誘する側に

マルチビジネスに入会すると、自身が商品を売るか、新規会員を勧誘することで報酬を得ることができます。しかし、商品を販売する場合、在庫を抱える必要があるため、売れなかったときのリスクや仕入れ金額のことを考えると、新規会員の紹介料で稼ぐ手法を優先するでしょう。

勧誘を受けた際に、「エステを開業するならそのお客さんを勧誘すればたくさん稼げます」と誘導してくるかもしれません。そのアドバイス通り実行してしまうと、今度は自分がマルチビジネスの勧誘をする側になってしまうのです。

マルチビジネスに騙されないための注意点

先述した通り、マルチビジネスは法律で認められており、健全なビジネスモデルで売上や会員数を伸ばし続けている業者もいます。では、どのようにすれば悪質な業者を見極め、騙されずに済むのでしょうか。

  • 勧誘方法が健全であるか見極める
  • その場で即決しない
  • 事前の下調べをする

勧誘方法が健全であるか見極める

連鎖販売取引の勧誘には明確な法律が存在します。まず、勧誘する前に次のことを明示する必要があります。

  • 販売業者名
  • 商品の種類
  • 勧誘目的であること

これらのことが全て明かされた状態でなければ勧誘をしてはいけません。直接会ったとき、相手が説明もなく商品の紹介をしてきた場合、この時点で違法行為となるのです。
(法第33条の2/連鎖販売取引における氏名等の明示)

勧誘場所に関しても、「公衆の出入りする場所以外の場所」での勧誘は全て禁止されています。「公衆の出入りする場所」とは、誰でも出入りが可能な場所を指し、カフェやレストランなどは「公衆の出入りする場所」に該当します。

しかし、中にはカラオケボックスやレンタルスペースなど閉鎖された場所で勧誘をしてくる業者もいます。このような場所で勧誘することは禁止されており、事前に勧誘行為であることを明示していたとしても違法となります。

さらに、勧誘の際に「絶対に売れる」「月収〇〇万は簡単に達成できる」などの文言は誇大広告にあたるため、このような表現も違法行為に。他にも、当該ビジネスの概要を記載した概要書面を交付しなければならないなど、様々な規制が設けられています。

健全なマルチビジネス業者であれば、法律で定められた勧誘方法をしっかり守って運営されています。一方で、悪質な業者であればこれらの決まりを守っていないことが多いです。

法律に則った勧誘方法をしていない業者は、例外なく悪質な業者と見て間違いないでしょう。

その場で即決しない

悪質なマルチビジネスの業者はあなたの悩みや弱みを巧みに利用して入会を誘導してきます。自分では冷静に話を聞いているつもりでも、深層心理では心に抱えている不安や焦りから早く解放されたいと感じているかもしれません。

そのような状態では、客観的に見ればおかしな点があったとしてもなかなか気付くことができないでしょう。特に、馴染みのないマルチビジネスの仕組みを一度聞いただけで全て理解することは難しく、言われたことをそのまま受け取ってしまいがちです。

即決するのではなく、改めて持ち帰って話を整理することで、気付くことができなかったデメリットに気付くことができるかもしれません。もし、「持ち帰って話を整理してから決めたい」と伝えても応じてくれなければ、それは違法行為にあたります。

業者を見極めるためにも、その場で即決せず持ち帰って冷静な状態で判断しましょう。

事前の下調べをする

商材や販売業者が事前にわかっている場合、インターネットで調べれば様々な情報を得ることができます。先述した通り、マルチビジネス業者は勧誘する前に商材や販売業者名を明示する必要があるため、得られた情報をもとに下調べをしておきましょう。

インターネットで検索すれば、様々な情報が掲載されています。悪質なマルチビジネスの場合、被害に遭われた方の声も見つかるかもしれません。そうした情報を事前に知っておくだけで、実際に勧誘されたときも冷静に話を聞くことができます。

悪質なマルチビジネスの勧誘を断り大切なものを守ろう

エステサロン業界に関するマルチビジネスの手口などをご紹介してきました。悪質なマルチビジネスを始めてしまうと、様々な大切なものを失ってしまうことになります。

悪質なマルチビジネスを無くすことは難しいですが、被害を最小限に抑えるためにも正しい知識を身につけておきましょう。そして、自身が悪質なマルチビジネスの手法に手を染めることがないようにしてください。