憧れのエステサロン営業、当然ですが楽しいことばかりではありません。

来店されるお客様には最上級のサービスでおもてなしをするのが大前提。しかし、営業していればサービスが行き届かずご満足頂けなかったケースもどこかで発生するでしょう。

もちろん失敗は努力して避けるべきことですが、クレームやご意見を頂いた場合には真摯な対応と新たなミスを生まないための振り返りが不可欠です。

今回は、エステや脱毛など美容サロンにおけるお客様からのクレーム対応についてお話します。

  1. サロンではどんなクレームが想定される?
  2. クレーム対応、基本の7原則
  3. クレームを未然に防ぐには?
  4. エステサロンにクレーム対応は日常茶飯事

サロンではどんなクレームが想定される?

まずは、美容系サロンに多いクレームの性質や、クレームを受けやすい営業の内容についてご説明します。

クレームには2種類の性質が

サロンで受けるクレームの性質は、大きく分けて2種類。

  • 通常のトラブルによるクレーム
  • クレーマーの疑いがあるユーザーからのクレーム

サロン側に落ち度がないクレームの場合でも、金銭奪取を目的に要求をエスカレートさせるタイプのクレーマーは確実にいます。

しかし、サロンのサービスにご満足頂けず結果的にクレームにつながってしまうことの方が多いのもまた事実。

更なるご迷惑につながらない、正しいクレーム対応はどんなお店にも必須なのです。

クレームはあらゆる内容で発生する

サロンとしては問題ない対応をしたと思っていても、自分たちが気づいていないサービスの問題点が表面化する場合もよくあります。

  • 接客の内容や態度
  • スタッフの知識不足や経験不足
  • 経営者の指導不足

しかし、すべてのクレームの元を辿れば原因は上のようなものであることがほとんど。

サロンの営業(施術)の流れに沿って、具体的にどんなクレームが発生しやすいのか考えてみましょう。

初回の説明に関連するトラブル

クレーム初回カウンセリング後に行うコースや料金の案内は、金銭が関係することからトラブルやクレームにつながりやすいプロセスのひとつです。

  • 強引な勧誘
  • 説明不足
  • 宣伝や謳い文句と実際の料金設定の異なり
  • 解約の可否

これらのトラブルは、「説明時ではなく後からクレームになることが多い」という特徴を持っています。

売り上げにノルマを付けているエステサロンでこのようなクレームが発生している場合、ノルマ達成のことしか頭なく強引なクロージングをしてしまうケースがほとんど。

「強引に契約させられた」とお客様が思ってしまわないよう、お客様のためになるコースを誠実におすすめし、料金やメリット、デメリットについても正しくご案内しましょう。

施術に関連するトラブル

クレーム施術者の知識や技術不足に加え、事前確認を怠った場合に発生しやすいのが施術に関するトラブルです。

  • 施術で体調が悪化した
  • 施術後に肌トラブルが出た
  • 施術に効果がない
  • 脱毛の場合、照射漏れや硬毛・増毛化があった

これらのクレームを回避するには、施術前にていねいな説明をしてご納得いただけたうえで同意をもらうのがとても大切。

持病がある場合は、かかりつけ医の同意も必須要件にしましょう。

医療行為でなく美容を目的とした施術であること、体調が悪化する可能性があることをご理解頂く必要があります。

予約に関するトラブル

クレーム

意外と多いのが、施術後の次回予約に関するトラブル。

  • 予約が取れていなかった
  • 予約日時が間違えられていた
  • 予約がなかなか取れない

お客様は忙しい中サロンに通うために時間を割いてくださっているのですから、予約にトラブルがあれば怒られるのも当たり前。

お客様を交えた予約時のダブルを徹底し、来店時に施術を行える状況であれば融通を利かせましょう。

クレーム対応、基本の7原則

クレーム

ここからは、クレームを訴えるお客様への対応の際、ぜひ心に留めてほしい大切な基本について解説します。

覚えておきたい原則は7つ。

  • お客様の話をしっかりと聞く
  • ていねいにお詫びをする
  • クレームに対しどう対応するかお伝えする
  • 「報連相」を徹底する
  • 真摯な対応をする
  • ご意見に対し感謝を伝える
  • 悪質なクレームには金銭で対応しない

お客様の話をしっかりと聞く

お客様の話を傾聴し、お客様が伝えたいことやお客様の気持ちをよく理解しましょう。

  • お客様のお話に相槌を打つ
  • お話の内容を復唱し、理解したことを分かりやすくする
  • 一通り話し終えるまで、説明や言い訳をしない
  • お客様の感情が高ぶっている場合は、話してもらいながら落ち着きを待つ

この項目に限らず、すべてに通じるのは「誠意をもって対応する」こと。

こちらもヒートアップするのは絶対に避け、まずは落ち着いて冷静に対応しましょう。

ていねいにお詫びをする

クレーム

クレーム内容をすべて確認し終えたら、真っ先にお詫びをしましょう。

エステ側に非がないクレームの場合もありますから、クレーム内容についての謝罪ではなく、「不快な思いをさせたことに対する謝罪」であることをハッキリさせなければなりません。

責任がどちらにあるのかが分からなくても、お客様が不満に思っていることには変わりがないのです。

傾聴の項目と同じく、説明や言い訳から入るのはNGです。

クレームに対しどう対応するかお伝えする

お客様のお話から責任の所在が明らかになったら、「なぜそのようなことが起きてしまったのか」原因をお伝えしましょう。

その後はお客様にご理解・ご納得頂けるよう今後の対応についてもお話します。

後ほどご説明しますが、この項目はサロンオーナーやスタッフリーダーなど、立場がある人間が同席する、あるいは担当するのが望ましいでしょう。

「報連相」を徹底する

クレーム美容業界においても、むしろ美容業界だからこそ、「報告」「連絡」「相談」の徹底が何よりも大切です。

トラブルが起こったらまずはお客様の話をよく聞き、責任者の元に内容を持ち帰って判断を仰ぎます。

責任者は必要があれば、お客様のお話を自分でも聞いておくようにしましょう。スタッフとお客様の話に食い違いがある場合もあります。ただし、何度も同じ説明をすることを煩わしく思ったり、苛立ちから更に感情的になってしまったりするお客様もいるので、状況を見極めながら動きましょう。

トラブルの原因と対応策の方針が決まったら、上長が「今回のクレームをサロンの課題としてとらえる」「必ずきちんと対応する」という姿勢を見せるのがよいでしょう。

悪質なクレームの可能性が高い場合も上長が動くことが理想ですが、対応はこの限りではないと想定できます。

スタッフの権限には限界がある

クレームの営業への反映や今後の対応策について、いちスタッフが判断する内容としてはどうしてもハードルが高いものもたくさん存在します。

とくに金銭が関わる内容は、お店側としてもスタッフに判断させるのは怖い、と思う場合もあるでしょう。

クレーム対応のマニュアルを作成し、傾聴後に上長の指示を仰ぐよう明文化してスタッフとルールを共有しておきましょう。

真摯な対応をする

クレームを寄せるお客様は、大なり小なりサロンによって不快な思いをさせられています。

必ず誠実に対応し、逃げずに「申し訳ない」という気持ちを伝えましょう。

ミスをしたスタッフは自分の気持ちを冷静に保てないかもしれません。しかし、ハッキリ言うとスタッフの気持ちはお客様には何の関係もないのです。

怖いからと逃げず、素直に謝ってお客様とよく向き合う姿勢を見せましょう。

ご意見に対し感謝を伝える

お客様からのクレームやご意見は、裏を返せばサロンが良いお店となるための貴重な情報でもあります。

自分が客だった場合のことを想像してみてください。

お店のサービスに対して不満があったとして、それをスタッフやオーナー本人に直接伝えようとすることはあるでしょうか? 余計な諍いを避けたり、面倒に思ったりしてそのまま放置し、お店を変えて終わりにする人も多いのではないでしょうか。

良いサロンに生まれ変わるためのチャンスととらえ、貴重な助言に対して丁重にお礼をしましょう。

悪質なクレームには金銭で対応しない

クレーム

クレームを寄せるお客様の中には、ご意見の幅を超えて過剰な要求や抗議を繰り返すクレーマーも存在します。

お客様のお話をよく聞いたうえで内容が言いがかりに近く、なおかつ以下のような要求があれば、悪質なクレーマーと判断すべきでしょう。

  • 契約にないサービスを無料で要求してくる
  • いきなり全額返金や過剰な現金を要求してくる
  • 最初から言葉が強く、脅すような喧嘩腰

こういったケースでは、お客様に屈せず毅然とした態度でしっかりとお断りする意思を見せることが重要です。

その場での回答は避けよう

スタッフでもオーナーでも、クレーマーのお客様に対応する場合は「その場での回答や決断」を避けましょう。

謝罪する場合でも、あくまで不快な思いをさせたことについてお詫びをします。トラブル内容について非がなくても謝罪してしまうのは絶対にやめてください。話がこじれた時に不利になる可能性が高まります。

ひとりで対応するのは避けよう

ひとりで話をせず、絶対に2人以上でお客様とお話するようにしましょう。1対1で証人がいない状態だと、言った言わないの水掛け論になってしまいがちです。

対応はひとりが行い、もうひとりはお客様を観察しながら話の内容を記録しておくのがよいでしょう。

クレーマーは理論的に話して納得してくれるものではありません。証拠をきちんと残しておくことを心掛けましょう。

個人情報を控えよう

弁護士やエステサロン向けの店舗賠償責任保険会社などと相談することを伝え、お客様の名前や住所、連絡先などの個人情報は必ず控えさせてもらうよう話しましょう。

オーナーが知識を身に着けておくことでサロン全体を守れます。個人情報を控えるのはもちろん、事業に関連する法律をしっかり理解しておくことも大切です。

いきなり金銭で解決は断固×

絶対に避けてほしいのは、早く解決したいからとお金を支払って終わらせることです。

相手の要求がエスカレートしやすいだけではなく、同じようなクレーマーの間で「あのサロンは払ってくれる」という情報が流れ、他のクレーマーのターゲットになりかねません。

矢継ぎ早に悪質クレームを発生させないためにも、NOと言える毅然とした態度を終始維持しましょう。

クレームを未然に防ぐには?

クレームクレーム対応の事前共有も必要ですが、お客様に通いたいと思ってもらえるサロンになるためにも、クレームを未然に防ぐための対策はより重要です。

知識と技術を身に着ける

クレームにならないような知識と技術力が身についていなければ、そもそもお金を払って施術するお店として不適格なのではないでしょうか。

自分のスキルを信頼するだけでなく、自店や外部のセミナーや講習会に参加するなど知識面と技術面の双方からお店全体のレベルをボトムアップできるような取り組みを行いましょう。

カウンセリングの力を高める

一口に「カウンセリング力」と言っても、クレームを防ぐために求められる技術はさまざまなものがあります。

  • お客様のお話を聞く力
  • 的確に質問をする力
  • お客様の悩みの原因を見抜く力
  • 的確なサービスをご案内する力
  • 案内や価格、商品のメリットやデメリットを正しく伝える力
  • 誤解がないように契約に同意してもらう力
  • 購買心理についての知識
  • 真摯に対応する態度と心構え

こういったカウンセリングに関する力は習得に慣れが必要ではありますが、開店から日が浅いサロンであってもある程度の能力を蓄えておくことが重要視されます。

なぜなら、カウンセリングはお客様にとって「サロンへの玄関」だから。

ここでコミュニケーションを良好に取れるか否かが、クレームの有無や顧客満足度の向上につながります。

事前シミュレーションやセミナー講習で場数を踏み、また自分が他店のユーザーとなることで他店のカウンセリングのいい所と悪い所を自分なりに考えてみるのもいいでしょう。

お客様の気持ちを見抜く

施術に神経を集中させてしまう気持ちも理解できますが、なるべくお客様の態度を観察して不満を抱えていないか見極めるようにしましょう。

  • 不満を抱えていそうではないか
  • クレームをつけやすそうなタイプか
  • 自分の意見を言えるか言えないか

やり取りの中でお客様の特性を掴めば、なんとなく不満そうにしているかどうかも判断しやすくなるでしょう。

その場合は「どうなさいましたか?」とひとことフォローを入れることで、クレームを未然に防げる可能性も高まります。

定期的にアンケートを実施することで、クレームの元になりかねない営業体制を改善しよりよいお店に作り替えていくのも効果的です。

エステサロンにクレーム対応は日常茶飯事

高額な商品を扱い、かつお客様のお身体に影響するエステサロン業界や脱毛サロン業界は、店側の対応に不満を持ちクレームを寄せるお客様も決して少なくはありません。

少しでもクレームを減らしお客様にご満足頂くための事前準備は怠ることなく徹底しましょう。

また、万が一クレームが発生してしまった場合にも、真摯に対応して双方納得できるような終結を目指したいものですね。